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甲状腺クリーゼの啓発が必要 隈病院の赤水氏 見逃しの可能性も

講演する赤水氏(提供写真)
講演する赤水氏(提供写真)
 甲状腺専門の隈病院(神戸市、58床)は3月1日、神戸市内で、医療関係者向けの研究会を開いた。同病院院長の赤水尚史氏が甲状腺クリーゼについて講演し、自身が作成に携わった診断基準や疫学調査の結果などを報告した。甲状腺クリーゼは極めてまれな疾患と思われているが、実際には見逃されている可能性があるとし、初療することが多い救急科や一般内科への啓発が必要だと呼びかけた。

 甲状腺クリーゼは、甲状腺中毒症に感染などのストレスがかかることで発症し、高熱や循環不全、意識障害などの症状を呈する。多臓器不全を起こすこともあり致死率は10%以上と高い。まれな疾患だが発症すると生命の危機に直面するという。

 赤水氏を中心とする学会研究班が2008年に診断基準を作成し、2012年に改訂版を発表した。また2016年に診療ガイドラインが作成されている。

 2009年に行われた全国疫学調査によると推計患者数は年257人で、全甲状腺中毒症の約500人に1人の割合となった。基礎疾患はバセドウ病が97%を占め、患者の2割は甲状腺疾患未治療の状態で発症していた。発症の7割に誘因があり、具体的には「抗甲状腺薬服用不規則」と「感染症」が多かった。

 また、同氏の研究班による別の研究によると、初診診療科は救急科が33.6%、一般内科が28.3%で、両診療科で6割を占めた。さらには、診療ガイドラインが8割の症例で遵守され、致死率が5%台と半減したことが示された。

 赤水氏は講演で、甲状腺クリーゼ関連死を減らすためには、バセドウ病の早期診断や、抗甲状腺薬のアドヒアランスの向上などが重要であることを指摘。きちんと治療薬を服用しないと急に死亡することもあり得ると患者に伝えることなどを促した。また、甲状腺クリーゼの早期診断のため、診療ガイドラインがあることを一般内科医らに周知することが重要だとの考えも示した。
2024.06.03_記事下登録誘導バナー_PC.png

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