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〈サクッと解説〉#04 特定機能病院の安全管理体制 見直しへ

  • kona36
  • 4月7日
  • 読了時間: 4分

 厚生労働省の検討会が2月、特定機能病院の安全管理体制を強化する方針を固めました。医療事故をA〜Cの3つに類型分けした上で、対策を講じるべき重要な類型については、報告対象のリストを整備する予定にしています。医療提供という複雑なプロセスの中で日々起きる事象をどう対策につなげていくか。そのための仕組みづくりが改めて求められています。

 「相当な驚きを持って拝見した。患者の立場として大変な不安を覚える」「(まさか)特定機能病院が、という気持ちがあったので驚きが大きい」。厚労省の検討会で2月、政策の議論には似つかわしくないような厳しい意見が相次ぎました。複数の構成員が率直な意見をぶつけたのは、全88の特定機能病院の医療安全管理部門の専従者に行った調査結果です。この日の検討会で結果の報告がありました。

 それによると、全体の8割弱に当たる68病院の回答を集計した結果、20〜40%の特定機能病院では、欧米などで「ネバー・イベント」などとして確実な把握や検証が求められている重大事象を院内の第三者部門(医療安全管理部門等)が確実に把握する体制となっていませんでした。例えば、「ABO型不適合輸血または移植」を把握する体制となっていたのは75%程度、「検査結果のフォローアップやコミュニケーションエラーによる重症化」は60%超にとどまりました。また、把握した事例のカルテレビューの実施所要時間、検証する会議の開催にばらつきがあることも浮かび上がりました。

 特定機能病院は、高度な医療提供や研究などを行う医療法上の施設類型として1993年に誕生しました。当初は大学病院本院とナショナルセンターが対象で、その後、一部のがん専門病院などにも拡大された経緯があります。

 しかし、腹腔鏡手術を受けた患者8人が術後4カ月以内に死亡する医療事故などが明らかになり、2015年、2つの特定機能病院が承認を取り消される事態となります。1999年、2005年にも医療事故を理由とする承認辞退や承認取り消しが起きており、厚労省は数度にわたり、安全管理体制を強化してきました。そうした経緯がある中で報告された前述の調査結果は一部の構成員にとって「医療安全を最優先する意識の欠如」と映ったようです。

 ですが、この調査結果から特定機能病院が安全管理をおろそかにしていると断じてしまうのは少し早計かもしれません。むしろ各病院によって把握する事案や対応にばらつきが生じていることを課題と捉え対策を講じていくべきでしょう。

「影響度」と「回避可能性」で3類型

 前述の調査結果を受けて厚労省は、医療安全対策の強化を提案し、大筋で了承されました。強化のポイントは、「患者への影響度」と「回避可能性」に着目して事象を3つの類型に分け、類型ごとに報告や対策を求めることです。

 3つの類型とは次のようなものです。
 
▽A類型=患者への影響度が大きく、確実に回避する手段が普及している事象(海外の「ネバー・イベント」等)
(例)誤認手術、異物遺残、ABO不適合輸血など

▽B類型=患者への影響度が大きく、回避可能性は事例により異なる事象
(例)ハイリスク医療における合併症(侵襲的手技の重大合併症、化学療法による有害事象での重症化等)、 医学的管理の問題(患者状態変化への対応等)など

▽C類型=患者への影響度が比較的小さい事象
 
 A類型とB類型についてはそれぞれ、医療安全管理部門に報告する事象のリストを定め、A類型は全例、B類型は疑義がある場合に検証と対策を求めます。

 対策が必要とされた場合のプロセスもあらかじめ定めます。医療安全管理部門が重大な事案と認めた場合、医療安全管理委員会が議論した上で、管理者に報告し当該部門に介入できるようにします。緊急性がある場合は、委員会の議論を経ずに管理者の判断で介入することを可能にします。

 厚労省は、強化策の狙いについて「日常で起こる問題に対応できる仕組みを持ってもらう」と説明しています。

「罰を厳しくすると隠す」

 医療安全対策を講じていく上では「罰を厳しくしすぎると人は隠すようになる」という事実を踏まえることが重要とされています。人がミスをする存在である以上、重要なことは、ミスがあっても重大な事態を回避し、また、同じようなミスを繰り返さないような対策を講じていくことでしょう。そのためには現場で発生した事象の迅速な把握が欠かせません。1つのミスをあげつらうのではなく、ネガティブな情報こそを組織内で共有しその都度対策を講じていく、そうした組織の姿勢が求められています。

 臨床検査技師がこれから検査室外の業務を拡大していけば、医療事故のリスクにより向かい合うことになります。自身の役割の拡大とともに、医療安全に対する意識を高めていくことが必要になります。(枇)
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