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〈レポート〉心リハチームに検査技師が参画 天理よろづ相談所病院


 天理よろづ相談所病院(奈良県天理市、715床)の臨床検査部は、栄養サポートや糖尿病、irAE(免疫関連副作用)監視など、さまざまな診療分野のチームに参画している。特徴的なのが心臓リハビリテーション(心リハ)チーム。呼吸機能検査を担当する検査技師が設置当初の2011年からチームに加わり、心肺運動負荷試験(CPX)や検査の患者説明などを担当する。循環器内科医や理学療法士などと連携し、患者の社会復帰や再発防止などを検査の立場からサポートしている。

 
天理よろづ相談所病院

 臨床検査部は全100人が所属し、検体検査が43人、生体検査が36人、病理細胞診が10人、管理職・ローテーション・受付が11人となっている。このうち生体検査部門には、呼吸機能検査、循環器(心電図・心エコー)、腹部エコー、神経機能検査の各グループがある。


 呼吸機能検査を担当する川邊晴樹氏は、理学療法士からのCPXの講義の依頼をきっかけに、心リハチームに参加するようになった。「今後心リハが広がる。臨床検査技師も参加しませんか」。当時検査室と同じ階にあったリハ室の理学療法士から誘われ、勉強会に参加するうちに自然とチームに加わるようになったという。現在、呼吸機能検査を担当する全4人がチームに入り、CPXなどを行う。


 以前は年7件程度だったCPXの件数はチーム設置後、年40件程度に増え、現在は外来を中心に年70〜80件になった。


 医療保険制度上、心リハは、急性心筋梗塞や狭心症、慢性心不全、心大血管疾患術後などが対象で、CPXなどの検査により患者一人一人の状態を見極めながら運動療法や生活習慣指導を行う。実施した場合に算定できる診療報酬点数の届け出医療機関数は年々増え、2022年5月時点で1600近くになった。


 日本循環器学会などが策定しているガイドラインでは、多職種によるチーム医療を推奨し、CPXの実施などを検査技師の役割と位置付ける。「(正確な運動処方のために)運動負荷試験に熟達した検査技師の存在が欠かせない」と書くが、現在のところ診療報酬点数の算定要件の専任医療職種に臨床検査技師は含まれず、検査技師の存在感は強くない。川邊氏も、多くの施設でCPXは理学療法士が実施しているのではないかという。


 専門性を生かせる


 天理よろづ相談所病院では、医師の監視の下、検査技師2人が組み、毎週火曜日午後に患者1人当たり約45分のCPXを3人に順次行う。検査が終わるとその場で医師と話し合い、心リハの重要な指標である「AT(嫌気性代謝閾値)ポイント」を決め、さらに2週間ごとに開くカンファレンスで多職種間で確認する。決定したATポイントを基にリハビリ内容を決めていくが、peak VO2やVE-VCO2 slopeなどさまざまな指標から患者の心機能を把握し、検査結果からの気づきを伝えることも検査技師の役割。結果解釈について客観的に説明するなど、検査技師の専門性を生かせる場面があるという。


 毎週1回開く患者向けの心臓病教室は、各職種が持ち回りで講師を務め、検査技師にもほぼ月1回のペースで役目が回ってくる。CPXやBNP値などの検査項目について毎回、30分程度説明し、参加者からの質問を受ける。質問の内容はもちろん、検査にとどまらない。薬や食事のことを聞かれたときは、心リハチームの勉強会などで得た知識を患者にフィードバックする機会になる。


 それでも自分の知識不足を実感し、川邊氏は学会が認定する「心臓リハビリテーション指導士」を2017年9月に取得した。奈良県内で検査技師が資格を取得したのは初ではないかという。


 多職種連携、視点の違いを感じ


チームの理学療法士の2人と川邊氏(中央)

 川邊氏は、心リハチームに検査技師が加わる意義について、「12誘導心電図や生化学検査の結果などを踏まえてCPXの結果を解釈できる」とし、検査側の多角的な視点から結果を解釈できることを挙げる。CPXの検査精度を確保することも検査技師の本分だ。


 チーム医療の場面で看護職などと話すと視点の違いを実感することが多いという。「看護師や理学療法士の視点は、患者さんがメイン。検査室にいると検体や番号で前回値を見たりするが、他の医療職と接すると、患者さんに医療職としてどうアプローチしていくか、勉強になる」と話す。


 AI(人工知能)やロボットが臨床現場でも使われるようになり、将来、検査技師の業務が様変わりすると心配する声がある。そんな意見に川邊氏は、「チーム医療の分野はAIではできないところ」という。検査室から出て多職種と話をし、結果を患者にフィードバックする。そこに検査技師の将来の姿を見る。だからこそ川邊氏は、これから心リハに加わる検査技師がもっと増えてほしいと願っている。

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