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〈レポート〉若手技師の資格取得支援で成果 JA愛知厚生連


 グループ病院の臨床検査部門が協力しながら、若手臨床検査技師のスキルアップを支援する試みが軌道に乗り始めている。愛知県内で複数病院を運営するJA愛知厚生連では、緊急臨床検査士の資格取得支援のほか、知識や技術を段階的に習得していくための独自の教育プログラムを数年前から導入。若手技師への教育に重点を置いた組織的な取り組みは、技師個人のスキルアップだけでなく、グループ全体の検査部門の活性化にもつながっている。

 
JA愛知厚生連

 JA愛知厚生連は安城更生病院(771床)、江南厚生病院(684床)、豊田厚生病院(606床)など8病院を抱え、合計の病床数は3514床。高度医療を提供する大規模病院から、地域の医療ニーズに対応した中規模病院まで幅広い医療を提供している。


 グループ内の臨床検査技師は315人(2023年9月時点)で、愛知県臨床検査技師会の会員の約1割を占める。平均年齢は男性43.5歳、女性39.7歳で、年代別に見ると最も多いのは20代の29%で、30代が27%、40代が15%、50代が19%となり、多くの若手技師が現場を支えている。


教育プログラム、6領域で独自開発


 JA愛知厚生連の検査技師教育で、中心的な役割を果たしているのが各病院の代表で組織する教育担当者会議だ。同会議では生理、生化学免疫、病理細胞、輸血、微生物、血液一般の6部会が活動しており、2020年から領域別に独自開発した教育プログラムの運用をスタートさせた。プログラムは若手技師が知識や技術の到達目標を確認しながらスキルアップを目指せるよう、年代や状況、立場に応じて求められるスキルなどが体系的に設定されており、8病院の検査技師教育を下支えするツールとして定着してきた。教育担当者会議の実務を担う加藤雄大氏(豊田厚生病院)は、「グループでの統一的な到達目標や課題などが明確に示されることで、個々の技師のレベルアップに貢献できている。より使い勝手の良いプログラムにするために必要な検討を加えていきたい」と話す。


加藤氏

 同会議では、若手技師のセカンドライセンスの取得支援にも力を入れており、目に見える形で成果が出ているのが、入職2~3年目の登竜門に位置付ける「緊急臨床検査士」の資格。従来は各病院で資格取得をサポートしてきたが、2019年7月実施の試験対策から、グループ全体で5月にウェブ講習会、6月に模擬試験を実施する支援策を取り入れた。


 ウェブ講習会では試験本番に向けた筆記試験の要点や、実技試験のコツなどを解説。翌月の模擬試験では、ウェブ講習会で学んだ要点の習得状況を、実際の試験と同じ環境下で確認する。模擬試験では、筆記試験をGoogleフォームで行い、試験終了当日に採点し、受験生で間違いが多い問題をピックアップして、弱点を把握しながら本番に臨むことができるのも特徴だ。一般や血液、微生物などの領域別の講師は、1年前に資格取得した若手技師が中心的な役割を果たしている。


取得支援で合格率90%超え


 資格取得のサポートを開始した2019年度のJA愛知厚生連の合格率は90.9%(全国平均71.5%)。コロナ禍で中止となった2020年度を挟み、2021年度は82.4%(同54.8%)、2022年度は87.5%(同61.0%)、2023年度は83.3%(同69.9%)と、全国平均を大きく上回っており、 現在70人の検査技師が緊急臨床検査士を取得している。受講した若手技師からは「講義や模試なしでは対応できていなかった」「苦手な部分が明確になり、不安材料を減らして試験に臨めた」などの声が寄せられており、きめ細かな支援策への手応えを感じている。


 加藤氏は、緊急臨床検査士の資格取得の意義について、「就職後の早い段階で資格取得を経験することで、より専門性の高い資格を目指すきっかけになる。若手技師が自信を持ち、モチベーションが高まることはグループ全体にも良い影響を与えている」と説明。さらに「緊急検査項目を筆記と実技試験でカバーでき、日当直業務に必要な知識や手技を幅広く習得できるほか、日常業務でも生かせるノウハウも多い」としている。今後は緊急臨床検査士や、各部会が担っている二級臨床検査士の取得支援だけでなく、超音波検査士や細胞検査士、糖尿病療養指導士などにも支援対象を広げていくことも検討課題になるという。


 JA愛知厚生連では、ここ数年で取り組んできた、教育プログラムに基づく各領域での人材育成や、セカンドライセンスの取得支援など、若手技師へのスキルアップを促す仕組みをさらに発展させていく計画。検査技師の初期教育のアプローチで足並みをそろえることで、グループ病院間の教育格差の解消にもつながるとみている。今後も体系的な教育システムでの試行錯誤を重ね、グループ全体の検査部門の底上げにつなげたい考えだ。

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