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〈インタビュー〉山中万次郎さん(長野県臨床検査技師会青年局長)他施設の技師とのつながりで「可能性や選択肢が広がる」【動画あり】


 インタビュー「きらり臨床検査技師」は検査技師としての本来業務だけでなく、所属施設外で精力的な活動を行っている方、興味深いテーマや研究に打ち込んでいる方、ユニークな資格や経歴を持つ方など、編集部が“きらり”と感じた検査技師を紹介します。(MTJ編集部)

 

 臨床検査技師会で若手会員の活動が目立ち始める中で、長野県臨床検査技師会(長臨技)の青年局長として精力的な取り組みを進めているが山中万次郎さんだ。信州大学医学部附属病院先端細胞治療センターでの日常業務の傍ら、長臨技の若手会員のスキルアップや、施設の枠を超えたつながりを後押しするイベントの開催など、若手会員と技師会組織の橋渡し的な役割も担う。若手検査技師のリーダーの一人として、青年部活動の意義や思いを語っていただいた。

 
―臨床検査技師を目指すようになったきっかけや入職までのキャリアを教えてください。
 小さい頃から顕微鏡をのぞき込む授業や、物理、生物などが好きな理系の学生でした。高校生の頃には医療分野に進みたいという思いがあり、卒業後の進路を考える頃に知った臨床検査技師という職種が、自分が興味のある仕事内容に近いのかなと感じて目指すことに。大学は熊本大学医学部保健学科検査技術科学専攻に進学し、在学中は2度のオランダ留学も経験させていただいて、卒業後に信州大学医学部附属病院(以下、「信大病院」)に入職しました。

◆研究テーマが縁で信州に

オランダ留学時代、多くの仲間と
 信大病院に来るきっかけはいくつかあったのですが、熊本大での所属研究室の先輩が、信大病院臨床検査部におられたことが大きかったです。現在、信大病院臨床検査部の副技師長を務めている重藤先輩は熊本大在学中に、ポンペ病という酵素が生まれつき欠損している先天性代謝異常症について、日本人での症例解析を論文にされていました。私も留学時に、この疾患を巡る世界の動向を学んだり、日本人の症例報告をさせてもらったりしました。振り返ってみると、研究テーマを通じたご縁があったのだと思います。

 職場を見つけるにあたり、自分がこれから何をやりたいかを考えた時に、臨床検査技師としての役割を医療現場で果たしながら、研究も取り組みたいという思いが強かったです。先輩から信大病院のお話を伺っていると、自分が思い描いているような働き方やキャリアを重ねていくことができる環境だと感じました。それ以外にも、職場見学の際に感じた夏の爽やかな気候や自然豊かな土地柄であったり、近くの松本空港から地元の福岡空港に飛行機1本で帰れたりといったこともあったと思います。

◆チーム医療の一員としてのやりがい

―先端細胞治療センターの所属の検査技師として、どういった日常業務に携われているのではしょうか。
 入職後1年間は研修技師制度を利用して全検査室を経験し、2年目から配属になったのは輸血部です。輸血部では輸血業務に加えて白血病や悪性リンパ腫などに伴う造血幹細胞移植の関連業務があり、そこでの経験を活かす形で現在は細胞治療に携わっています。医師や看護師、薬剤師、情報部、医療事務など多職種から刺激を受けながら、チーム医療の一員として経験を積み、患者さんへの治療に貢献できていることにやりがいを感じています。「CAR-T細胞療法」では、タスクシフト・シェアで認められた静脈路確保に関する一連の業務で製品の原料となる細胞採取(アフェレーシス)に臨床検査技師として対応できる部分がありますし、大学病院として新たな治療法である「治験CAR-T細胞療法」にも携わっています。

◆「学術研鑽、情報交換の場」への若手ニーズ

―局長を務める長臨技青年局が発足10年を迎えました。これまでの活動も含め、どういった研修会やイベントを行っているのでしょうか。
 青年局は現在、30歳前後の約20人を中心にして、若手技師が参加しやすい研修会、交流会を企画、運営しています。若手が知識やスキルを学ぶ場だけでなく、施設を超えた若手技師同士の人脈づくりに力を入れていて、技師会主催の新人研修会のサポートを通じて若手技師と技師会との橋渡し的な役割も果たしています。

長臨技入会員の研修会(左下)
 先輩方が青年局を立ち上げた頃に、若手技師のニーズに関するアンケートを行ったところ、「若手技師向けの参加しやすい講習会を開催してほしい」とか、「スキルアップのためにどのように勉強すればいいかを知りたい」「他施設の若手技師が何を考え、何に取り組んでいるかを知る機会がない」などの声がありました。学術研鑽や情報交換の場へのニーズが大きかったことを受け、日当直業務や資格取得に関するものや、学会発表へのテーマの見つけ方や、R-CPCなどをテーマにした講義内容を組んでいます。当初は宿泊研修会の形でしたが、参加者の要望やコロナ禍もあり、座学だけでなく実習も加えた日帰り研修会の形で行うこともあります。
研修会案内パンフ
イベント案内パンフ

 研修会のイベントを重ねるたびに発見があるので、内容も少しずつ進化してきたように思います。開催案内のパンフレットもオシャレなものにしたり、初めて会う人同士が交流しやすいようにアイスブレークを工夫したり。臨床現場で出てくるような英会話を、カルタ形式で遊びながら学べる企画も組みました。

◆青年部、技師会活動の入り口に

―局長として感じている青年局の存在意義や、今後考えている新たな活動などがあれば教えていただけますでしょうか。
 青年局員の皆さんと話をして感じるのは、所属施設内だけでは解決しにくい課題や悩みがやはり多いということですよね。臨床現場で困りがちなテーマについて、どのように対応していますかとアンケートを投げかけてみてもいろいろな意見やアイデアが出てくるわけで、私自身も他施設の運用を参考にすることがあります。青年局の活動を通じ、さまざまな施設の検査技師との人脈ができることで悩みや課題へのアドバイスやヒントが聞けることも多いです。そういったところに青年局の存在意義の一つがあると思っています。

青年局主催の研修会の様子
 また、多くの技師会の課題として、組織の将来を支える若手会員に参加してもらい、活動を活性化させたいということがあるかと思います。ただ、技師会組織と、20代会員との関係を考えた時には、どうしても世代ギャップが出てきます。その間に青年局が入ることで、若手会員からも技師会組織が見えやすくなるというか、参加しやすくなる部分はあると感じています。青年局の活動が、技師会組織への入り口になるという意味合いもあるのではないでしょうか。

 日本臨床衛生検査技師会の首都圏・関甲信支部(1都8県)の各技師会にアンケート調査を行うと、ほぼ全ての都県で若手会員による組織が何らかの活動をはじめているが分かっています。今後、協力してアンケートなどを行いながら、青年局のような部門に、若手検査技師がどういったことを求めていて、どういった活動ができるのかなどを探っていきたいと考えています。青年局間で情報交換する機会も増えていますし、まだまだできることがあると思っています。県や支部という枠を超えたつながりの輪が広がればという思いがありますね。

◆出会いや気づきがキャリアアップに

―青年局のような部門の存在を知って、他施設の同世代とのつながりを広げたいと感じている若手技師もいると思います。自身の経験も踏まえ、若手技師の皆さんにメッセージをお願いします。
 私自身、臨床の現場で、どういう検査技師になりたいか、どのような活動がしたいかなど明確な目標があったわけではないです。ただ、現場での経験を積み重ね、いろいろな人との出会いがある中で、自分がやりたいと思うことの選択肢の幅や可能性を感じるようになりました。それは日常的に向き合っている業務以外にもあって、私の場合は新たな治療法を見出すための研究や、DMAT(災害派遣医療チーム)の活動であったりします。例えば、DMATとしての活動では、日常業務で関わることのなかった医師や看護師など多職種とのつながりもそうですし、実際に被災地に出向く経験から学ぶことも多くありました。

青年局が企画し参加した祭り「松本ぼんぼん」(右下)
 技師会の青年局での活動もその一つで、私自身は楽しみながら、他施設の検査技師とのつながりが広がっていく場だと思っています。そういったところに、一歩踏み出していくことでいろんな可能性や選択肢が見えますし、刺激を受けることで、その幅も少しずつ広がってくる。目の前の検査業務だけでなく、周りの組織や他施設の取り組みを知ったりすることで、新しい気づきがあり、それがキャリアアップにつながってくるということを知ってもらえればうれしいですね。



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