top of page

〈記者コラム〉検査の目的

 10年ほど前、くしゃみと鼻水の症状があり医療機関を受診したところ、アレルギーの検査をすることになった。採血をされ1週間後、検査結果を聞きに行くと、医師がパソコン画面を前に首をかしげている。スギ、ヒノキ、ブタクサ、ハウスダストなどアレルギーを引き起こす主な原因物質について調べたが、私の検査結果はそれらに対するアレルギーはないということを示していた。
 「この検査結果からは、原因が分からないねぇ」と医師。検査の対象項目以外で考えられる原因物質として、中国から日本へ飛んでくる黄砂、PM2.5、そのほか寒暖の差が激しいことに反応して鼻炎の症状が出る人もいるとのことだった。そして、さらに「でもね、花粉症でもそうでなくても、結局、鼻炎に処方する薬は同じなんですよ」と付け加えた。

 原因を特定できても、できなくても処方薬は同じ。それでは、検査の目的はいったい、何なのだろう? 心の中に湧いた疑問が私の顔に表れていたのか、医師は話を続けた。

 検査でスギの花粉が原因と特定できれば、患者はスギの木が多い場所への外出を避け、眼鏡やマスクなどで花粉に触れるのを防ぐこともできる。つまり、アレルギー検査は治療のためだけではなく、患者が日常生活の中で対応策を検討するためのものでもあるということだった。
 毎年、花粉の飛散が始まる頃になると、この医師の話を思い出す。検査の技術は進化しているから、今再び検査をしたら私の症状の原因を特定できるかもしれない。しかし、幸いなことに、ここ数年、春先にくしゃみや鼻水に悩むことはなくなった。なぜ、症状が出なくなったのか。こちらの原因も分からない。(河)
2024.06.03_記事下登録誘導バナー_PC.png

その他の最新記事

MTJメールニュース

​株式会社じほう

bottom of page