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体外診は薬だけど

 7月下旬、急に具合が悪くなり、近所のクリニックを受診した。発熱があったため、すぐに検査室に通され、鼻腔検体を採取されて待つこと十数分。名前を呼ばれて診察室に入ると、医師が透明の袋に入れた検査キットを見せてくれた。陽性を示すラインにくっきりと線が出ていた。

 「新型コロナ(COVID-19)ですね」

 身体はだるく重かったが、検査結果を示されて、ほっとした。

 検査に適した検体がしっかり採取されたに違いない。検査キットの感度も良かったのだろう。そんなことを考えながら、処方薬の説明を聞いていた。食後に服用する薬が3種類ほど用意されているのを見ながら、ふと「検査キットは薬だけど、薬じゃない」と考えた。
 COVID-19の検査キットは体外診断用医薬品であり、「薬=医薬品」の一種だ。しかし、私が、「薬」として思い浮かべるものは服用したり、傷口に塗って使うものだ。効果と副作用があり、自分の身体に何らかの影響を及ぼすものというイメージが強い。検査キットを「薬」と呼ぶのは、どうもしっくりこない。
 厚生労働省は、体外診断用医薬品の規制の見直しを進めており、論点の一つとして副作用報告制度が挙がっている。医薬品は副作用の報告が求められるが、体外診は人の身体に直接使用されないため、副作用の概念が当てはまりにくい。諸外国では、体外診を医療機器の不具合報告に含めて取り扱うところもある。こうした現状を踏まえ、体外診は医療機器と同様の不具合報告制度にする方向で検討されている。この点は、医療従事者や製造販売企業、一般の人にとっても、しっくりくるものになるだろうか。見直しの行方を見守りたい。(河)

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